バンブー茶館のかめきちさんが、この春、中国を回って集めてきたお茶の品茶会が、今年も根津のanomaで開催された。ここで飲めるお茶は、もうとにかく、普通のレベルではないというか、他所で「単ソウ」として売られているお茶とは、全く別物だと考えた方が良い。そういう種類のお茶だと思う。それらが、次々と出てくるわけで、もはや受け取るこちらもまともな感覚では無くなっている。だから「ん、イマイチかな?」と思ったとしても、その「イマイチ」は、他の店では「メチャメチャ美味い」というレベルだったりするわけで、毎度のことながら、そういうレベルのお茶と、どういう顔して付き合えばいいんだろう、と思ってしまう。
海風號の設楽さんが、「ウチで真面目に単ソウをやらないのは、かめちゃんのお茶があるからだよ」と言っていた。設楽さんらしいなと思う。多分、中国に茶葉を買い付けに行っても、同じレベルの茶は仕入れられないだろうし、そもそも、本来は商売とかになるレベルの茶葉ではないのだ。ということで、この後、今回飲んだお茶の感想とかを書いていくんだけど、基本的には「メチャクチャ美味い」というレベルはクリアした上での話だと思って読んで欲しい。去年に比べて、凄まじいと思うお茶が少なかったとは思ったけれど、それは「美味しくなくなった」という意味ではないのだ。人間の味覚は、どうしても相対評価に流される傾向があるので、それを踏まえた上でということでよろしく。以下、飲んだ順に。
01.烏東蜜蘭香単叢2号

何で2号やねん、とか思うが、要するに単ソウの名前の付けられ方というのは、とてもシステマチックであるということの一例であるということらしい。それはそれとして、甘味を押さえた「お茶」っぽさが強い味わいが俺好み。味は、スッキリとしたお茶らしいキレなのだけど茶杯には甘い乳香が残る。3〜4煎目以降、バランスが良くなって後はずーっと美味しく飲める。甘味も強くなっていく。これ、最初に出てきたお茶だけど、俺らのテーブル(恵さん、ひらたさん、相沢さん、俺)では大好評。勿体なくて、本当に出なくなるくらいまで飲み続けた。
02.烏東老叢芝蘭香単叢

収斂味のある、ガツンとアタックの強いお茶。奥に甘味があって、全体にキリッと絞まった感じがした。単叢らしい美味しい苦味がしっかりあって、こういうのを冷茶にすると美味いんだよなあと思った。茶杯にはとても甘い香りが残り。飲み続けていくと、どんどん美味しくなっていく。前にも思ったのだけど、この芝蘭香の美味しい奴というのは、親しい人と喋り明かすような時に飲みたいと思うのだ。さりげなく飲み続けられるのに、お茶としてもハッキリした主張がある、正に「喋りの友」ではないかと。
03.安渓鉄観音粒々香蘭花型

最近は、鉄観音は香りのタイプで違いを表すのだとかめきちさんが教えてくれた。で、これは蘭の花の香りがするタイプということらしい。海風號の特等安渓鉄観音が、この蘭花型になるようだ(と思う、と、海風號で飲んだかめきちさんが言っていた)。生なお茶は苦手な俺ではあるけど、ここまで美味いと美味い事は良く分かる。何煎か出した後なら、本当に美味しく飲める。花香の強さの割に、切れ味が良いのが凄いと思うが、それが良いお茶である証明かというと、それは知らない。
04.鳳凰青胡苦茶

話題の、見た目は単叢、飲んでも口当たりは単叢、香りも美味そうなムードがある単叢、でも、後味には粉薬を飲み損なった時のような、イガイガした苦さが張り付く。かめきちさん持参の文献によると、「涙が出るほど苦くて、砂糖や生姜を入れて飲んだ」ということらしい。とても身体に良くて、二日酔いの薬にもなるらしいけど、お茶としてはどうだろう。苦さが心地よいというお茶もあるけど、これはなあ。困るのは、飲めば飲むほど苦さが喉の奥に蓄積すること。しかも、そう簡単には消えてくれないのだ。しかし、口当たりは美味いから、つい飲んで、溜まっていく苦さに「うーっ」となる、そんな感じ。茶葉が凄く薄いのが印象的。
05.烏東獅頭黄枝香単叢

最初、鳳凰青胡苦茶の苦さが喉に残っていて、このお茶の味が全然分からなかった。もしかしたら不味いのかとか思ってしまったくらい。しかし、飲んでいくウチに喉に張り付いた苦味が抜けて、美味しく飲むことが出来た。しかし、何と言うか、単叢が持つ色んな魅力を集めて一つのお茶に集約したような感じで、それだけに全体にパンチには欠けるものになっているように思った。だからこそ、鳳凰青胡苦茶の苦さが消えるまで、お茶その物の味が分からなくなっていたのだと思う。それでも、煎を重ねるごとに増していく甘味とフルーティーさは、他のお茶には無い魅力で、「ザ・単叢」と言っても良い感じになる。
06.肉桂王美女香

最後の焙煎をしないで、茶葉本来の味と香りをストレートに出した岩茶だそうだ。俺は、青いお茶は苦手なのだが、その「青さ」というのは、どうやら半発酵の発酵度が低いお茶を焙煎せずに作った「青さ」のことであって、しっかり発酵させたものだと、それが生っぽい仕上げであっても、美味しく飲めるのだ。だから、こういうお茶は、どちらかというと好きである。「青い」と一言で言っても色々あるなあと思うのだ。俺にとって、このお茶は「青く」ないのだ。青いというよりも、台湾茶的なムードがあるなあとか、さっと出して薄めで飲む方が美味いなあとか、そういうことを思った。茶葉のエキスがお湯に溶け出すような感じのお茶で、かめきちさんの「お茶というよりスープ」という言葉が一番分かりやすい表現かも。ミネラルな感じが喉の奥に気持ち良いのは、良い岩茶なのだなあとか思った。
07.烏東群体単叢

もう茶葉の香りからして美味そうだった。最初の飲み口から後味、戻り香まで一貫して美味しくて、甘味が心地よい。そう、最近の俺は、お茶の甘味に関して否定的というか、甘さは少ない方が美味しいと思ったり、甘いお茶はわざとらしくてイヤとか思っていたのだけど、このお茶の甘さは、そういう「いわゆる甘いお茶」とは甘さが違って、何とも心地よい自然な甘さだったのだ。単叢の甘さは、樹液っぽい甘さが多いのだけど、それとも違うし、穀物的な甘さでも、甘草的な甘さでもない。不思議な「美味しいお茶の甘さ」としか言いようがない、あんまり他では感じたことがない甘さだ。で、煎を重ねるごとに、透明感が増して、果実感があるのにクリアなキレ味という矛盾した要素が上手くまとまってて、アイソトニック感さえある。今回、俺が一番好きだったのはコレだ。淹れた茶葉からはとても爽やかなグレープフルーツのような香りがしたのも印象的だった。
08.城門単叢

最初は、香り少なめ、色も薄めで、すーっと身体に入ってくるような淡い雰囲気の優しいお茶だと思った。キレが悪くて、美味しいけど好みじゃないかとか、思っていた。しかし、5煎目を越えたくらいから、ビックリするほど甘くなって、こんなに甘いお茶があっていいのかというくらい甘くなって驚いた。俺が今まで飲んだお茶の中で、甘さでは文句無くナンバーワン。なんだろう、佐藤錦とかあまおうとかを初めて食べた時の衝撃に似ているかも。「甘露」とかを求める人は一度は飲んだ方が良い、というような甘さ。
09.烏東蛤古撈単叢

このお茶が採れる木の佇まいが、伏せたガマに似ていることから「蛤古(ガマ)」と呼ばれるお茶だそうだ。かめきちさん的には今回の単叢の一番良い奴、ということで、確かに文句なく美味い。ちょっと酸味みたいなのがあって、それが美味いのだ。干しぶどうのような甘さと、スッキリした単叢の香りの奥に、何故か「トロリとしたムード」が併存して、とても複雑な味わい。その複雑さを、「表情の変化」くらいに軽く捉えて、がぶがぶと普段飲みに出来たら、これほどの幸せはない、というような感じで、俺は、相沢さんと「会話が弾むお茶だねえ」などと話していた。こういうのが普通に飲めたらどんなにいいか、と思う。普通に飲むことで、この複雑さが相殺されて、「あはは」と笑いながら幸せになるんだけど、それが出来ないくらい産量が少ないというのは、かなり残念。本当に、こういうお茶こそ、普通に飲みたい。
10.名叢半天腰

これは美味かったなあ。岩茶って、こういう風に美味いと本当に美味いなあとか、何だか分け分からんこと考えながらゴクゴク飲んだ。もう、お茶会も4時間くらい経過してたけど、それでも元気に美味しく飲んだ。「ああ、俺が飲んだことがある『半天腰』は、全然違うものだなあ」と思った。半天腰って、凄く産量が少なくて、普通に流通するようなお茶では無いのだそうだ。それは、飲むと良く分かった。甘味と奥深い味わいが喉の前の方と後ろの方で上手く混ざって、それが気持ちいいのだ。煎を重ねると、岩茶のエキスはコレ、みたいな味になって、これがまた美味い。もしかして、この岩茶っぽさが「岩韻」なのか?分からんが。しかし、こういう「お茶を飲んでるなあ」という気分を濃厚に味あわせてくれるお茶は好きだ。
以上。1回の記事で書く長さじゃなかったか? とりあえず1つづつのお茶について詳しく感想を書いてるサイトは無かったんで覚書代わりに書いてみたけど、これは100%俺の主観。客観的な視点なんて、これっぽっちも入ってないので、もし購入の参考などにする場合、そのへんを注意してね。
同じ日のレポートは以下のブログにもあります。
・ひらたさんの「Tea Recipe 2」 の「新茶会 at anoma」
・恵さんの「まめ小路入ル」の「言ってみりゃお茶のボディブロー」と「欲しいな」
日にち違いの方のレポートは以下に
・ちょしさんの「神融心酔」の「ANOMA 鳳凰単叢新茶会」
・ちるさんの「のまるくめでる」の「恒例!!かめきちさん単叢茶会 in ANOMA」