実家の麦茶

ずっと、子供の頃から、この麦茶を飲んでいた。覚えてるのは、幼稚園の年中さんの頃の夏、母親が言った、この夏は麦茶を冷やしておこうね、という言葉。麦茶って何だろうと思ったのを、とても鮮明に覚えている。その後飲んで、美味いと思ったのも覚えている。博多の狭いアパートだった。
麦茶って、プリミティブな飲み物だけに、いれる水の質や、やかんの形状、麦茶そのもののロットやその粒の具合など、様々な要素で簡単に味が変わる。特に水の影響を受けやすく、同じ麦茶を使っていても、実家で作ったものと、俺が東京のマンションで作ったものでは別物になる。実家の麦茶の味と言ったところで、実は一つではない。
それでも、これを飲み続けてたなあと感じる味わいは確かにあって、それを酒好きの父親が持ってるロックグラスで飲むのも、いつからかの俺の定番。
実家が引っ越すので、また麦茶の味が変わるかもしれない。この懐かしい麦茶の味は、この冬が最後かもしれない。まあ、たかが麦茶だし、さほど深刻になるものでもないけど、しみじみ、実家の麦茶の美味さを感じる、霙まじりの佐賀の夜なのだった。いや、ほんと、麦茶って味変わるよー。
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