碧螺春というお茶のこと

海風號の碧螺春、30g、4000円
かつて、俺は碧螺春というのは大して美味しくないお茶だと思っていた。何か日なた臭くて(それを干し草の香りとか表現されてて、いやそれは負け惜しみだと思っていた)、味は淡泊で、まあ甘いと言えば甘いけど、だから?というような。その認識を変えてくれたのが、数年前の海風號の碧螺春で、もう本当に驚いた。
香りは日本茶の新茶の香りをさらに瑞々しく、甘くしたような感じで、味は様々な美味しさが複雑に混ざり合ったもので、それでいてクリアな感じがして、いつまでも甘く、心地よいもので、その春から夏にかけて、どんだけ飲んだか、というくらい飲んだ。その年の海風號の龍井も美味かったのだけど、碧螺春の気持ち良さには敵わなかった。
ただ、そんな碧螺春には、他所ではほとんど出会えない。俺が、美味しくないと思ってしまったのは無理もないというくらい、美味い碧螺春を飲む機会は少なかった。色々聞いてみると、要するに極端に産量が少ないのが大きな要因らしい。果樹園の中で、きちんと育って、他のお茶には無い独自の製茶過程が色々あって、その製茶過程そのものも、本来の意味が見失われて、ブランドとして確立している龍井に比べて値が付かず、美味しい美味しくないがハッキリ出るから偽物が作りにくく、本当に美味しく作るのは難し過ぎて、価格も決して安くはないけど、龍井のように、そこに意味を見いだすほどでもなく、だから産量はさらに減り、価格は上がり…。
要するに、ちゃんと作るのも大変だし、美味しいのを日本に持ってくるのも難しく、でも龍井ほどには商売にならない、というあたりで、美味いお茶にとても当たりにくい状況にあるのが碧螺春ということらしい。
そういう話を聞かなくても、碧螺春の茶葉の形や香りの独自性を見れば、作るのが大変そうなのも、他の中国茶に比べて特殊な製造工程がありそうなのもよく分かる気がする。飲めば、その他には無い香りと味で、やっぱり、その特殊性が分かる気がする。お茶は嗜好品だし、好みによるとは思うけど、碧螺春に限っては、その味わいに「こんな味ってあり?」というような特殊性を感じなければ、それは碧螺春ではないと言い切っても良い気がする。
少なくとも、海風號の碧螺春と、愛子さんのところの碧螺春は、そんな「特別な味と香り」がする。だから、ずっと幸せに飲み続けられる。ああ、そう言えば、どちらも東山碧螺春だ(愛子さんのところには一部、とても美味い西山碧螺春もあるが、やや例外的)。
今年の海風號の碧螺春は、甘味よりも、クリアな香味と飲み口のスッキリした切れ味が特徴だと思う。甘味は煎を増すごとに、じんわりと現れてくる。味の輪郭が鮮やかだから、お茶請けと一緒に飲んでもお茶の味が消されない。お茶請け有りでも無しでもイケるから、ちょっと大きめのグラスに茶葉入れて、お湯を注ぎ足して飲み続けられて、とても気持ちが良いお茶だと思う。みえさんが「こんなに美味しい碧螺春を飲んだのははじめて!って思うくらい美味しかった」と書いている気持ちが分かるお茶だと思った。
海風號では去年は価格と味のバランスに折り合いが付く茶葉がなく、碧螺春は扱わなかった。今年は、扱える茶葉があった。それだけでも嬉しいと思う。この味で30g、4000円は安いと言ってよいと思う。設楽さん曰く、ほとんど儲けが無くて悲しいのだそうだ。

碧螺の春2
愛子さんのところでは、凄い龍井と凄い碧螺春を飲み比べる機会があった。もちろんどちらも凄く美味しいのだけれど、どっちにお金を出すと言ったら、迷うことなく碧螺春だと思った。海風號では、碧螺春はきちんと良い茶葉を仕入れ、龍井は「龍井の美味しさを多くの人に知ってもらう」というコンセプトで、明前にこだわらず、茶葉の形にこだわらず、茶農が自分たちで飲む、見た目よりも味わい重視の茶葉を安く売ることにしている。何となく、龍井と碧螺春の正しい扱い方のように思った。
毎年飲める保証もなく、この先飲み続けられる保証もない。碧螺春という名前の全然別のお茶になる可能性だってある。高い茶葉を勧めるのは、好きじゃないけど、碧螺春に限っては、美味しいのが飲めると分かってるのなら、多少の無理はした方が良いと、とても思ってしまう。今、家に遊びに来たら、絶対美味い碧螺春出すから、美味いと思ったら、買って飲んで、美味い碧螺春が商売になるということを中国政府にきちんと伝えられたりしたら良いなあ(しかし、このブログ、何かフィルターに引っかかって上海では見られないらしい・泣)。
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/6568/15160562
この記事へのトラックバック一覧です: 碧螺春というお茶のこと:
» 太平猴魁(たいへいこうかい・安徽省) [中国茶と中国よもやま話]
観光地でも有名な黄山市で作られるお茶。1900年代初めから作られ始めた。 緑茶の中では、知る限り茶葉が一番大きなお茶。写真の葉でも、長さ約6cmある。挟み、炙るようにして乾燥させるので、茶葉に網の目がついていることもある。 産毛も多いお茶で、清涼感があり、甘い。日本の緑茶にも共通した旨味といえる。 茶葉は長いので、多めに入れるのがこつ。... [続きを読む]
受信: 2007.07.04 18:02



コメント
のーとみさん!
洞庭碧螺春の産地「東山のおとん」の家にいます。
大丈夫、ばっちり隅々まで見えてますよーーー♪
時間はかかりますが・・・。
獅峰龍井の産地「翁家山のおじちゃん」の家からも見えました!
もひとつ、杭州でネット借りたときも見えていましたよーーー♪
上海でも大丈夫なはずですが、今回は通り過ぎただけなので確認はしていないので分からない。
次回上海泊の時に確認してみますね!
----------------------------------------------------
以上、6月4日に書いたコメントです。
東山から何度送信してもエラーでしたぁ~。(涙涙)
コメント欄は出るのですがそれを送信すると、
『アクセス不可』
『このページの表示が認められていません』←ほとんどこれ
ということで、帰国した日本で送信していまーす。
投稿 愛子 | 2007.06.09 18:57
愛子さん、どうもですー。
中国では色々不穏なこのブログです。上海からは見えなかったと報告を受けてますけど、繋ぎ方とかで違いそうな気もします。
にしても、美味いです。碧螺春。
とりあえず、安渓の前に、お茶とか、酒とか、飲みましょうねー。
投稿 のーとみ | 2007.06.11 01:03