お茶を淹れる所作について
Photo by megmu@mame-en
茶芸師について書いたついでに、よく言われるところの「お茶を入れる時の所作の美しさ」について考えてしまった。「美しい所作」というのは、しかし、実際どうなのかとか。
例えば、能でも日本舞踊でも、歌舞伎の所作事でも、座敷舞でもよいれど、そういう、いわゆる「所作」を見せる芸能の場合、あからさまに手首を返したり、いかにも指先まで神経が行き届いていますということを主張しているような感じだったりすることは、下品な芸ということになっている。あの手の芸能は、分かりやすさは細部でなく全体に、というのが基本だから、いかにも細部にこだわった見せ方はツマンナイね、というのが芸の根本。
何というか、いわゆる「熱演」がダサイというのと、所作のカッコ良さは似ていたりする。「ここが上手い」とか「あそこがキレイ」とか思わせるような芸は、まだまだということだ。ましてや、それがこれ見よがしなら、とても嫌みなものになる。技術は、そういう「嫌み」を消すことに費やされることが多いのが、日本で言う「所作」の芸。
で、そういう世界に長くいたせいもあって、俺は、その視点でお茶を淹れる所作を見てしまうことが多い。で、そうやって見ると、例えば「流れるような手の動き」が見えてしまった時点で、その所作がとても気持ち悪く見えてしまうのだ。別に、手の動きとお茶の味なんか、何の関係もないのだから、気にしなけりゃいいんだけど、茶壺の蓋を茶壺に乗せた指が、ひらりと次の方向に向けて返ったりするのが見えると、「キツっ」と思ってしまうのだ。
そういう動きは、どうしてもやりたいなら、他人に見えないようにするべきだろう。というのが、まあ日本の「所作の芸」の基本。
ただ、中国はまた違うようだ。それは歌舞伎と京劇の表現の違いとかにも出ているように思うけど、日本の「所作」は、言わば、徹底した合理性を突き詰めた先にある動きは、最短距離を動いて、表現したいものだけをきちんと伝える、という感じなのに対し、中国の所作は、極度に成熟した技術はムダを内包しても尚美しいはず、という感じに見える。
だから、茶壺持って踊ったりするのだろうな。変に手首を返したり、必要以上に背筋を延ばすのも、多分、技術で問題をなくすためにわざわざ内包する無駄、なのではないかと思うのだ。「凄さ」はアピールすべきである、という感じで。日本は「凄い」ということが分からないほど「凄い」だから、そりゃ、日本的な所作を見る目で中国茶の所作を見たら、ヘンなのはしょうがないかとか。
でも、俺は日本人で、日本でお茶飲んでるから、向かい合ってお茶淹れてもらって、それが心地いい、というだけを感じられる人の所作が好きなのだ。美しさなんて見えなくて、技術も見えなくて、見なくても良くて、でも引っ掛かりも無くて、気がつくとお茶が入っている。つまり、当たり前の動きを当たり前に出来る人が淹れるお茶が好きなのだった。つーか、行き着く先は、やっぱ、そこじゃないかと。普通に淹れてるって感じで。技術の行き着く果てでもあり、誰でも出来る事でもあるというのが、俺は好きだなあ。
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コメント
こんにちは。またまた、なんとなく思ってたようなことを明確に文章化してくださいました。常々「自然な動き」、「どこが、っていうのはわからないけど、なんとなく美しい」を心がけています。教える立場のときはその裏にあるテクニックをお伝えするようにしていますが。。。まあ、結局は味がすべて、です。
投稿: カツマタ | 2005.05.31 12:02
「弄巧成拙」(ロウコウセイセツ)と詠んだ人がいました。技に翻弄されているようでは、まだまだ稚拙と言うことである・・
くらいの解釈でしょうか?
技や見かけに惑わされるようではまだまだ本物では無い・・・とでも思ったのでしょうか?
お茶も技や、巧く入れようとする所作が見えるようでは、まだまだで、何気なくおいしく入れられて、本物なのだと言っているように聞こえました。
「あんなに簡単そうに入れているのに、ほんとはなんて難しいの?」と思われるようになりたいものです。
のーとみサンは簡単に文章を書かれているように見受けられます・・・プロですよね・・・
プロついでに、ピアノを運ぶピアノ屋さんにもプロを感じて感動しました・・・変かな?
投稿: あっこ姉 | 2005.06.01 02:44
かつまたさん、どうもです。
こういうのは、実際に人に教える人が意識していたらキツイのでは?というきもします。なんつーか、もうイヤミに見えるかどうかなんて、とても微妙なものですし。
裏技、今度教えてくださいね。
あっこ姉さん、どうもです。
お店は順調ですか?
弄巧成拙はちょっと違うような気がします。何か、そういう「技術」そのものの否定ではなく、技術とムードの混同というか、そっちをまず問題にすべきかとか、そんな感じで。
投稿: のーとみ | 2005.06.17 03:19