亀廣永「したたり」

Photo by MEGMU@MAME-EN
したたり
1棹、1000円
亀廣永
京都市中京区高倉通り蛸薬師上ル
TEL:075-221-5965
凄い美味しいコンソメスープとか、丁寧に作った冷茶とか、俺が今まで食べたことがあるラーメンで一番美味しかった新潟の三吉屋のラーメンのスープとか、気持ち良く喉を走り抜ける紹興酒の老酒とかを見ると、美味しいの条件の一つに、凄く透明度が高いルックスと、それに見合ったクリアな味わいというのがあるように思う。そして、そのクリアを実現するのは、膨大な人の手と時間。
この「したたり」は、甘露と表現されるモノを、黒糖を使って形にしてみようという試みの一つの完成形かもしれない。ツルンと口に入った瞬間から、黒糖の上質な甘さと風味が立ち上がって、噛むとホロリと崩れながら舌の上でゆっくりと溶けていく。その溶けていく過程で黒糖の美味しい部分が身体に吸収されていくような、そんなお菓子。黒砂糖モノなのに、ここまで雑味が無いというところに特別感がある。
平たく言えば、やたらと美味い黒砂糖の寒天。それ以上でもそれ以下でもないのだけど、タダモノではないのは、持つと凄い重いこと。そして、この琥珀色の寒天の透明度の高さ。そして、驚くほどのフルフル感。持つと思った以上に重いというのは、味わいが凝縮された水の重さのせいのようだ。もう、ほとんど水なのだ。それが絶妙の割合の寒天でギリギリ形を留めている。だから「したたり」。ホント滴る。
流石は祇園祭の菊水鉾に献上されるだけのことはあるなあ。名前も前の八坂神社の宮司が名付けたらしい。もう、どんだけ手間がかかってるんだろうと思う。とにかく手間をかけることが美味しさに繋がるのは、シンプル過ぎる素材とその質の高さへの自信。だから、後は手間をかける。開発期間10年で、まだ完成ではないそうなので、理想はまだ上か。
これが、亀廣永のしかも本店でだけしか買えないというのは、まあ食べれば分かる。これが量産効くなら、日本は国を挙げて和菓子屋になって、それで世界征服出来る。春風秋月のAndyさんは、これを食べて、「東京には売ってないの? くう」と言ってたし、俺は俺で、もう一個の「月影」と並べて、「さあ、京都行く段取つけよう」とか思っていた。買ってきてくれた恵さんの勝ち誇った笑顔を見ながら、「次は見てろ!」と無意味に闘志を燃やしつつ、こっそり「ありがとー」と手を合わせる。だって、このお菓子、存在も知らなかったし。
恵さんから、見事に透明感を捉えた「したたり」の写真が送られてきた。見ていたら、口の中が「したたり」の記憶でいっぱいになって、その勢いでこれ書いた。一生懸命抑えたので、書かれていることが多少大袈裟に見えるとしても、それは真実(俺にとって)。
ほんと、甘露の滴をそっと掬って形に留めたという感じで、確かに「滴る」のだ。あんまり高くないのも良いよね。
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